鶴屋開店休業回転ベッド

あたしの創作世界の基盤。だけどとてつもなくフレキシブルでヨレヨレにブレてる。キャラが勝手に動くんだ♪

美月と歩に努と阿部っち (美月と真利村兄弟4)

「まだ、怒ってんのか。」
キスは上手いのに、どMのことが
何一つわかっちゃいない残念なやつ。
隣のクラスの阿部佑樹だ。
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続きは一応したかったみたいだが、
俺の怒りが冷めるのを待っているとか
いかにも殊勝なこと言ってる。
ところがどっこいだ。
俺はどMだからそんなのちっとも
美徳とは思えない。
したいんなら捕まえて縛って抵抗できない
ようにしてでもヤッてくれる方がいい。
あん。いま想像しちゃった。

阿部は今までの目とは違う目で俺を見る。
「なあ。俺、お前にビンタされてから
駄目なんだって。お前のこと、さ。」
なんかモジモジくねくねとつきまとって
上目遣いに赤い顔して俺を見る。
廊下の突き当たり、窓から外を見ようと
したら横から耳にキスしてきた。
「なあ。真利村。俺、お前に
惚れたんだよ。好きなんだ。」
は?
ほ?
す?












信じられるかよ。
そんなこと、あるわけない。
ふざけんな。騙されるかっての。

どM舐めんなっ!







俺はだいぶ美月先生と話すように
なった。今まで先生が女というだけで
言葉を交わすことすら嫌だった。
相変わらず先生はカラッと笑い
どかんと怒り、よく動いて
無駄に慌てて往復したりしている。
悩みがないんだろう。
なんて歩が悪態をつく。
俺は、好きだ。
大きな声じゃ言えないし
言ったら迷惑が掛かるだろう。
言わないけれど
先生が大好きだ。

もし。
あり得ないけれど
先生が望むのなら。
俺は先生をやさしく、抱いてやる。
ん?
女を抱くのって、どうやるんだ。


「努。まさか、お前。」
歩はやっぱり気に入らないらしい。
俺は、だいぶ年上だけど、はじめて
女を好きだと思えた自分が嬉しかった。
それに俺はこの気持ちを先生にすぐ
伝えようなんて思ってない。
俺が高校を卒業したら。
先生に堂々と気持ちを伝えにいこう。
俺が19になる年には、先生はギリギリ30。
大学に行きたかったけど、女一人養うのに
のんびり大学なんか行ってらんないよ。
働く。近所の信金にでも就職して
地道に働くさ。
「お前、さすが今までろくろく恋愛
してこなかっただけのことはある。
よくもまあ、そこまで少女漫画みたいな
夢を口にできるよな。」
えー。歩キツい。夢くらい見たっていい
じゃないかよう。
「そんな浮かれかたしてると、すっ転んだ
時が痛いぞ。知んねえからな。」
そりゃ。わかってる。
現実味に欠けることくらい。
あいつが、俺を好きっていったことくらい
馬鹿げたことだ。


阿部はわりとマメな男なのかもしれない。
毎日のように努を教室に迎えに来て
一緒に学校を出る。かならず車道側を
歩いて駅まで送り、そこからまた逆方向に
同じだけ戻っていく。
阿部は学校の近所に住んでいるのだ。
電車通学の努を駅まで送り届けて
また学校に戻る。昇降口を過ぎて
正面玄関につくと道を渡って
商店街のある方へ歩いていく。
途中で川沿いの道に出て公園を抜ける。
阿部は毎日、家に帰るのに小一時間
かけているのだった。
ほんとは徒歩10分なんだけど。
努は駅までの道のりが嫌いではなかった。
でも好きになるのも癪にさわる。
駅の改札の手前で、肩を抱いてくる。
大好きだぜ。努。また、明日な♪
なんか恥ずかしくて……胸がどきどきする。
なんだか早く犯されるほうが
なんぼか気が楽だなんて思ってから
これはどMという他に
少しだけ俺に問題があるんだろうなあ
なんて努が思い始めたのが
こんな風に一緒に帰り始めてから
二週間目の水曜日だった。