鶴屋開店休業回転ベッド

あたしの創作世界の基盤。だけどとてつもなくフレキシブルでヨレヨレにブレてる。キャラが勝手に動くんだ♪

綺麗な花には棘がある2(美月と真利村兄弟10)

瑞穂は柔道部の牧瀬加奈子と
剣道部の三田かおるに
努を襲わせることにした。
あんなひょろっとちっこい男なんだから
この二人で十分だと思ったのである。
女同士なら茶巾寿司にしてパンツも脱がせ
校庭に放り出せば良い。
でも、男ってどうするんだろう。
しかも、ホモなんだよこいつ。
最後まで戸惑ったままで計画は進んだ。

委員会のある日には
下校の時間がバラバラになる。
観察していると阿部が恐ろしく
ジェントルマンで努にやさしいのだ。
必ず歩道では自分が車道側を歩き
駅までの道程を努に寄り添い
最後に改札の前でふわりとハグして別れる。
幸せなオーラが胸を締め付けるような
切なさを呼び起こす。
いいなあ。わたしもあんな風に大切に
されてみたい。すてきだわ。
本当は、あれはわたしがされるべきこと。
あんなホモの邪魔が入らなかったら
彼に愛されていたのはわたしなのに。
そして阿部は改札で努を見送った後
自分の家に帰る。
そうだ。阿部は駅とは反対方向に家がある。
わざわざ、あいつを送るためだけに。
駅までを往復する。
なんなのよ。
どうして、あんなちんけなホモに
あんなにやさしくしてんの。
ひどい。わたしが告白したのに。
どうして、わたしにはこうしてくれないの。


委員会は二人別々なようだ。
多分、阿部の厚生委員会の方が
努の美化委員会より終わりは遅い。
5分いや10分ずれればこの体育館裏で
さんざん辱しめて身の程を思い知らせる
ことができるはずだ。
そうすれば、明日からはあんな風に
やさしくされるのはわたし。

瑞穂は加奈子とかおるを呼び出し
段取りを説明した。
加奈子はどっしりと堅太りの体型。
努をここに連れてくる役だ。
かおるは竹刀をつかって努を動けなくする。
喉元に突き付ければチビって座り込むだろう。
裸にして縛って写真を撮る。
それをプリントしてさんざん好きに
落書きをしてから正面玄関の掲示板に
貼ってやる。楽しみだ。
加奈子は黙って薄笑いを浮かべ
かおるは剣士の迫力で竹刀を握りしめ
鋭い目を瑞穂に向けた。
「な、なによ!あんたたち。バイト代は
払うっていってるじゃない!真利村を
なんとしても辱しめて当分学校には
来られないくらいにして頂戴!」

俺より早く終わったら先に帰っていいよ。
俺は待ってるけど。好きで待つだけだから
なにも気にしなくて良いからな。
佑樹はこんな風に言ってふわりと笑う。
努は委員会の教室から出て、佑樹の方を覗く。
いつものことだ。努は玄関ホールで座って
待つことにした。佑樹と一分でも長く
一緒に居たいのだ。思うだけで胸がうずく。
そこへ、柔道部の牧瀬加奈子がやってきた。


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ーあんた。なにやらかしたの。

このタイプの女子はまあ普通に話せる。
俺、何か柔道部に迷惑かけた?

ー違うよ。わからないなら直接本人同士で
話しな。あたしは手荒なことはしたくない。

ますますわからない。


体育館の裏に連れてこられる。
そこには大嫌いなタイプの
コロンをプンプンさせた
女子がひとりと
剣道部の三田かおるがいる。
かおるも口を開く。

「あたしも経緯はよくわからない。
この赤井さんがあんたのことが死ぬほど
気に入らないようなんでね。
あんたが本当にひどいことしたなら
あたしがこの場で成敗するよ。」

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瑞穂は顔色を変えた。
「違うわよ!そんな判定頼んでない!
あいつホモの癖に幸せそうで生意気よ!
はやく段取り通りやってよっ!」
加奈子とかおるは顔を見合わせて
溜め息をついた。
「こんなことにこれ以上関わりあいに
なりたくないね。あたしたち、練習あるし。」
加奈子とかおるはそれぞれの部活に
戻っていった。
努はポカンと口をあけて
加奈子とかおるを見送った。
「俺、あんたみたいなの、苦手なんだ。
用があるなら早く言ってよ。」
努はなるべく瑞穂から離れた。
匂いは嫌いだし触られるのは勘弁だ。
「あんた。あたしから阿部くんを
取ったでしょ!ホモの癖に!」
瑞穂もさすがに男の子相手に力では
勝ち目がなく、へっぴり腰で悪態をつく。
努は眉をひそめて一瞬動きを止めた。
「はじめ、俺があいつに襲われたんだけど。」
あれは歩が焚き付けたようだが、
事実関係は正しい。
もう、瑞穂は興奮しきっていて
ヒステリックに叫び続ける。
なんだこのホモ野郎!
汚ねぇぞ!
てめぇさえいなけりゃ
てめぇさえいなけりゃな!
努は恐ろしくなってその場を逃げ出した。