鶴屋開店休業回転ベッド

あたしの創作世界の基盤。だけどとてつもなくフレキシブルでヨレヨレにブレてる。キャラが勝手に動くんだ♪

綺麗な花には棘がある4(美月と真利村兄弟12)


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美月は容赦なく顔面に蹴りつけ
鞠を弄ぶように足先で回してうつ伏せにした。
男がサバイバルナイフを動かそうとする
手をまた上から思いきり踏みつける。
「さあ。ぼくちゃん。危ないですからね~
こんなもの、ナイナイしましょうね~」
美月はサバイバルナイフを取り上げて
畳んでポケットにしまうと派手に男を蹴り
飛ばして努の側にしゃがみこんだ。
「美月先生!佑樹を、佑樹を!!」
「大丈夫だよ。あっちは明とかおるが
フォロー済みだよ。」
美月が乱入したと同時に明のシュートが
男の顔面に見事に決まり、かおるの小手と
面、胴で決着がついたようだった。
え?関先輩?三田さん?
二人はスマートな動きで寄り添い、
先輩はかおるの腰を
やさしく抱いている。

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「あいつら、恋人同士。」
今回のこの事件も明とかおるが
美月にも教えてくれたのだ。

学園内とはいえ
成人している大学生の起こしたことだ。
警察にはきちんと通報した。
逮捕、立件へと動くだろう。
もちろん瑞穂も話を聴かれる。
現場検証に入る警官に瑞穂は平気で嘘をつく。
「あたしも捕まってここで脅されてたんです!
被害者なんですよぅ!」
主犯の大学生二人に、瑞穂は犯行の教唆で
取り調べられる。
現場で刑事が叫ぶ。
「救急車呼んでくれ!肋骨イッてるよ。」
見れば美月が蹴り飛ばしたヤツだ。
「これ、誰やったの?」
やばい。調子に乗りすぎた。美月が顔色を
なくしていると、努が肩に顎を乗せてきて
ウインクした。まかしといて。
「あの。俺が蹴りを入れて。無我夢中で。
すみませんでした。」
「そうか。被害者の抵抗の結果か。
これは正当防衛だな。」
美月は努の後ろに隠れてビクビクしている。
「長内せんせ。もう平気だよ。」
「あんがとー努ぅん♪」
美月がふざけて努に抱きついていると
喉元のナイフの傷の手当てを終えて
佑樹が戻ってきた。

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「努う!」
「佑樹!」
努から甘えるように抱きついた。
佑樹はバイオリニストが大事なバイオリンを
あごに挟むように努を抱き締めて言った。
「俺はどうなってもいい、なんて。
言っちゃダメだよ。」
「佑樹。だって、俺は本当に」
「あれはね。俺のセリフだから。」
努は佑樹の顔のすぐ近くにいるのに
涙で曇ってどんな表情をしているのか
わからなかった。涙は大粒でいくつも
頬を伝い流れていくのに、一向に枯れること
なく佑樹の顔は歪んだままに見えた。
「よかった。佑樹。無事で。」
「努。ありがと。」
美月は二人の肩を軽く叩いて
職員室に戻るために彼らに背を向けた。
そこには、真っ青になった亮がいた。
「賞平くんから電話貰った。だいたい話は
聞いたよ。」
美月は全然大したことなかったよ、と
いつもの笑顔をつくった。その口角をあげて
少し口が開いた状態で、あまり経験しない
痛みが走る。
亮からのビンタを食らったとわかるまでに
少しだけ時間がかかった。
「亮。なんで…」
「犯人は刃物を持ってたって
言うじゃないか!なんで警察より先に
踏み込んだりしたんだよっ!」
「え、亮。大丈夫だって。それに
モタモタしてたら子どもたちがやられてたよ。
そんなのは絶対にいや。」
「俺だってそんなことは言ってない!
でもお前が自分でしなきゃいけないことじゃ
ないだろう?バカ野郎!」
「なんだと!なんにもわかんないくせに
亭主然としたことぐたぐた言っちゃって!」
「そうだよ!俺はお前の亭主だよ!違うか?
どこの世界にナイフ持った男相手に喧嘩
しようとする女房、叱りつけない亭主が
いるかっての!馬鹿かお前は~っ!!」

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美月と亮の回りには努と佑樹、明とかおる
他、もろもろの先生方や事務員のお姉ちゃん
賞平くんも駆けつけていた。
亮は膝を折って崩れ落ちる。
大きなため息をついた。
「わかってる。お前はそういうやつだよ。
止めたって無駄だ。なのにな。」
美月は亮の隣にぺたりと座り込んで
顔を覗きこむ。亮の目があんまり
悲しそうで息ができなくなる。
「ごめんなさい。あたしが悪かった。」
やっとの思いでこれだけいうと
美月は自分の涙で溺死しそうになった。
亮は美月を抱き締めて、一度だけ
ほっぺたにちゅーしてくれた。


ーあんなちっちゃいナイフじゃ余程上手く
切られなきゃ一大事にはならないのに。
かわいいね。美月せんせの旦那さん。

かおるは明に抱かれながら昼間の出来事を
思い出していた。

ーあの旦那さんからすればさ。
美月先生はすごくかわいい普通の女の子
なんだろうな。まさか、唯一犯人の片割れを
病院送りにしたとか信じられないだろ。

明も楽しそうに話に付き合ってくれた。

そろそろいくよ?いい?
うん。いいよ。
かおるは目を閉じた。
明の動きが速くなり
二人一緒に息を弾ませた。
あたしたちってなんだろうね。
明は返事のかわりにとても甘いキスをくれた。