鶴屋開店休業回転ベッド

あたしの創作世界の基盤。だけどとてつもなくフレキシブルでヨレヨレにブレてる。キャラが勝手に動くんだ♪

歩と朱美(美月と真利村兄弟13)

もう周囲には
「歩と朱美は恋人同士」
という認知はだいぶ拡がっていて
二人はいつも一緒にいたし
仲睦まじいのだと誰もが思っていた。


お忘れの向きもあろうが
歩はバイで鬼畜なのである。
女は初めてだったが
その肉棒は男を虜にしていた時期も
あれば、男によって慰められていた
ことも多かったのだ。
薄々感じていた朱美だったが
初めての女は油断した。
そして自分の体によって
彼が女相手のセックスにも目覚めてしまう
という、まさに鬼畜に肉棒いや金棒という
恐るべき状態まで高まってしまったことに
朱美は気づけぬままでいたのだった。

そんな現実を直視せざるを得ない時は
案外とはやく訪れた。


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朱美は昼休みに図書館に行った。
そりゃ朝に歩から
「昼休みに駐輪場の裏で立ちえっちしようぜ」
と誘われていたけど、五時間目には歴史の
発表で当てられる予定だった。
放課後じゃだめ?というと
朱美は大胆だな!それじゃ下校するやつら
向けのドライブスルーAVじゃんか!
と笑われた。駐輪場の裏じゃないわよ!と
突っ込んだのだが。なにか虫の知らせと
言うのか、朱美はブルッと派手に震えると
そそくさと必要な資料を手に取り
何枚かコピーを取った。
持ち出し禁止の資料なら申し出るとコピーを
許されるのだが、そんなことしてる暇は
なかったし、その資料は持ち出し禁止でも
なんでもなかった。
朱美は小走りで駐輪場に向かう。


や、やだあ。真利村くうん。
ほー。山田ってわりといいおっぱい。
えー。そんな普通に立ったまま後ろから?
山田、もうちょっとお尻つき出してみ?
こ、こう?あ、あんっ!
なんだよ。準備万端。
や、やだあ。かきまぜないでえ。
これならいきなりでもいいじゃん。
あーん。もう、指じゃいやあ。
OK。んじゃ、行くぜぇ。
朱美は二人の背後から忍び寄り
歩のご自慢棒を思い切り手前に引っ張った。


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こんなにあっさり浮気をされるとは
思わなかった。
朱美は落ち込んだのだが、何より歩の
暖簾に腕押し状態が苛立たしかった。
だって。初めはお前を誘ったろ?
お前に断られたから、山田に声かけたら
OK貰えたから駐輪場えっちしてたんじゃん。
自転車にまたがったやつやってみたかったし。

もしかして。
わたし、歩のただのセックスフレンドなの?
女第一号なだけで、オンリーワンではないの?
あの甘い口説きはなんだったわけ?
まあ、よく思い起こすと
一言も「好きだ」と言われていない。
ほとんどあいつの吐息と手触り肌触りで
落ちた自分に気づく。
でもそれは私を好きだからじゃなかったんだ?
えー。

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歩にキスされるとスイッチが入る。
どこでも歩はスイッチを入れる。
いやだけどすごく素敵。
きゅんと感じはじめる自分を
決しておいてけぼりにはしないから。
歩は私を好きでいてくれてる。




と、思い込む脳内麻薬だったのかな。
自分はどうなんだろう。
そうよ。私は、歩のセックス以外
歩を好きなの?じゃあ、どこが?




なんていうか。
あんな風にセックスしてくれる
アイツが好きなの。
なんか、あたしもアイツと同じ。
でも、あたしはアイツとしかしたくないわ。
アイツは、あたしでなくても、いいのね。

朱美は急に悲しくなり
振られたような気持ちになり
すがりついたところを
振り払われたような気になり
派手に地べたにころんだような
もう歩には目を見て会話も持てない
なぜかそんな気になった。





「そんで、俺んとこきたの?」
朱美はこれからの自分の身の振り方の
アドバイスを貰おうと、歩をよく知る男の
元へと出向いたのだった。
「歩にはなんていったの?今日だって放課後
どうせ職員室の横の階段の窪みで背面座位で
決めねえかとか言われたんじゃないの?」
さすが双子の兄だ。一字一句大当たり。
「今日は家で用事があるって濁しただけ。」
あまり細かく設定をつけると歩は意外に
突っ込んでくるからだ。
「で、わかってると思うけどここは
俺んちだし歩もここに帰ってくるんだよ?」
何が言いたいんだろう。
「あ、そうだ。ごめん佑樹。苑田さんの話
聞いてる間、お前は本屋にでもいて。」
隣にいた阿部に努がよくわからない提案を
している。阿部も納得してはいない
ようだったが財布だけもって出ていく。
努は戸口まで阿部を送り、頬っぺたにキス
しあっていた。
「あ、ごめん。つい。」
二人は朱美に気づいて謝る。
「いいのよ。気にしないで。」
朱美は心底二人が羨ましかった。
あの瑞穂の起こした事件では気の毒だったが
あんな強い絆で結ばれている二人が放つ
オーラは眩しすぎて胸がいたい。
「で、苑田さんは俺に何が聞きたいの?」
朱美はこの前の歩の浮気の話をし
自分達の関係性や歩自身の恋愛観なんて
あるのかないのか定かでないあたりにも
触れてこれから自分はどうしたらいいかを
聞きたいの。と気持ちを打ち明けてみた。
その時、玄関でカタリと誰か入ってくる
気配がした。努はため息をついてうなだれた。
ひと悶着あるな。佑樹を家から出しといて
よかった。と独り言をいう。どういうこと?
歩はだんだんと階段を上がってきて
自分の部屋のドアをかちゃ、と開けたあと
努の部屋をどがんと開けて怒鳴り込んだ。

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「努!なんか俺に喧嘩売ってんの?
朱美は?どうしてお前の部屋にいるのさ!」
「いや、これはさ。」
「朱美は家の用事があるっていってたのに
なんで俺んちにいるんだよ!」
「ごめんなさい、歩!あたし努くんに相談…」
「俺に言えないことを努と二人で相談か?
なんのことなのかさっぱりわかんねえ!」
あれ?歩がすごく怒ってる。朱美はこの歩の
怒り方ははじめてみた。
理不尽なことをぐるぐるとしつこく指摘し
こちらに発言を促すようでいて全く聞く耳を
持たないこの感じ。歩らしくない。
「とにかく。落ち着けって。歩。」
「うるさい!お前は純正ホモのはずだよな
女は嫌いなはずだ。なのになんで朱美と
そんな部屋の中でくっついてて!なんだそれ
お前ほんとはバイなんじゃねえのか?」
「違うよ!お前の彼女と思うから」
「弟の彼女とするのは興奮するのかよ」
「気持ちわりぃこと言うな!」
「気持ちわりぃだと?バカにすんな!」
あー、もうわやくちゃ。朱美は静かに
立ち上がり荷物を持って歩の家を出た。
二人は一向に気づく様子もなく延々と口喧嘩を
続けていた。

歩の家を出たところで阿部と行きあう。
阿部にはあの双子たちが延々と痴話喧嘩を
続けていることを説明し、行って仲裁
してくれるよう頼んだ。阿部は笑う。
あの二人は一度始まっちゃうと何を言っても
無駄だからと首をすくめてウインクする。
でもその喧嘩が自分きっかけなのが朱美には
気になって仕方がなかったのだ。
「歩ってさあ。努にはすごく甘えるんだ。
あんなだだっ子なあいつ、見たことある?」
そうだ。見たことない。それも気になる。
「言ってることがどんどん支離滅裂に
なってきて。きっと暴れてる気持ちの整理が
つくまでのことなんだろうけど、それまでの
あっちこっち跳ね返る気持ちを努がずっと
受け流し続けてさ。たまにそれが収まらずに
拗れてくるとお姉さんがでてくる。
うるさい!ってこう、教科書丸めたので
バシバシって。」
朱美は今まで持っていた歩という男への
イメージが少し変わった。クールで飄々として
多少強引にエスコートしながら迷う暇を与えず
気づけばメロメロにさせられてる。
あいつはいつもあたしの何歩か先を歩いてて
かならず手をとって行ってくれる。
気持ちがいいくらいの力で引っ張ってくれる。
でもさっきの歩はあたしの何歩か後ろで
座り込んで動かない。
悪態をついて背を向ける。
「君があんな歩はやっかいだなと思うなら
踏み込まない方がいい。たぶん君はもう一歩
踏み込もうとしてるんだろ?」
朱美の頭のなかで何かが弾ける。
綺麗な水飛沫がキラキラするような
爽快なイメージで胸が高鳴る。
「阿部くん!ありがとう!」
朱美はまた歩のところに戻っていく。

努の部屋をノックすると渋い顔で迎え入れて
くれた。歩はもういなかった。
「あのさ。あいつ本当はすごく
面倒くさいんだ。あのやきもち、
おさめていってくれる?
俺もそろそろ佑樹と図書館に行くから。
家には誰もいないからさ。」
朱美はビックリした。
「え?あれ、焼きもちだったの?」
「え?聞いてなかったの?あいつは
純正ホモの俺が苑田さんに手を出すつもり
かって苛々してたんだよ?
だから佑樹を家から出したんだから。
間に合ってよかった。」
朱美はもう歩の気持ちが自分にはないと
思い込んでいたから、まさか焼きもちなんて
妬かれるとは思わなかったのだ。
「あいつセックスと恋愛感情がずれるんだ。
本人もわかってはいるんだけど。これは
惚れた女に矯正してもらうしかない。」


歩の部屋をノックすると
だいぶ待たされてからバンと荒っぽく
ドアが開いた。
「朱美。」
むっすーとした顔で藪にらみの怖い顔。
朱美は思い切り甘えて胸元にすり寄る。
「あゆむう。大好き。」
朱美はもっと知りたくなった。
このやっかいで面倒くさい男の子のことを。
どこを撫でてあげたらしずまってくれるのか。
「ねえ?歩はあたしのこと、好き?」
歩はそっぽをむいて答えようとしない。
「いいわ。あたしは歩だけよ。あんたとしか
セックスなんてしたいと思わないわ。」
歩は黙って朱美の腕を引っ張り、ベッドに
放り出して上から覆い被さりキスした。
「朱美。お前は俺だけの女だ。」
朱美は胸の奥が苦しくなる。
身体中がズキズキして、たぶんここに子宮が
あるんだろうなという場所が痛んで
その痛みが甘い痺れとなって花びらに降りた。
「うれしいわ。歩。あたしは歩の女。」

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