鶴屋開店休業回転ベッド

あたしの創作世界の基盤。だけどとてつもなくフレキシブルでヨレヨレにブレてる。キャラが勝手に動くんだ♪

賞平と朱美と鬼畜

朱美は毎度のことながら治まらない
彼の浮気に憔悴しきっていた。
ため息、出る出る。
自然とうつむき加減になる。
一目で元気がないとわかる。

担任の坂元賞平は迷っていた。
だいたいの事情は努ソースの美月経由で
承っているのだが、賞平は朱美の相談に
乗りたくなかった。
賞平も自分が高校時代には
歩並みに女を食っていた。
種まき本能、メス認定、条件が揃えば
腰を振ってしまうのもわかるのだ。
そう言ってしまえば俺はあいつ以上の
鬼畜として後ろ指をさされてしまいそうで
この件には深入りしたくない。
それが賞平の正直な気持ちだ。

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高校教師になり8年目。
高校生たちは恋愛相談を教師になどしない。
首を突っ込むにもよほど上手くやらないと
逆に反発をくう。
程よい距離感で、拗れていてもその
こんがらがった結び目をちょっぴり
揉みほぐしてやるだけで
あとは自分達できちんとほどく。
朱美と歩のは、だいぶ違う辺りで
特撮もののヒーローがバイクで走る横を
ドカンドカン爆発してるような状況で
んなとこ丸腰で突っ込んでいくほど
馬鹿ではないからな。
見たところ朱美はそうしてほしいようだけど。
賞平は朱美同様憂鬱な気持ちでため息を
ハデについてみたりしていた。

賞平は、朱美の成績が右肩下がりに
落っこちて行くに至り、覚悟を決めて
朱美をミーティング室に呼んだ。
朱美の自分を見つめる目が
なんだか熱い気がして、賞平はかなり困る。
こんなややこしいの初めてだ。
俺がさっき朱美を伴ってミーティング室に
入るとき。嫌な予感に鳩尾が重くなった。
歩は驚きの極度の嫉妬深い浮気症らしい。
俺は美月から聞いて耳を疑ったが
本当の事らしく、双子の兄でホモの努にまで
ヤキモチは及ぶらしい。しかも毎回毎回
朱美が努の部屋に入り込んで、二人きりで
歩を待っていたりする。
努は朱美が歩に可愛がり倒され、満足して
帰っていったあと、歩の暴力的な嫉妬の
犠牲になるのだという。
まいったな。これは仕事で仕方がないのだ。
あれ。随分と昔、似たようなことなかったか?
女子生徒とミーティング室にいるのを
後ろめたく思ったこと。
俺はなにも特別な感情は抱いてないのに
そこから招く嫉妬の二文字に気が引けた。
賞平は今から起こる展開をある程度予測出来て
早々にいやんなっていた。

「朱美。成績が落ちてるのはわかってんな?」
賞平は単刀直入に用件から切り出す。
「ん。わかってる。」
ぐは。しゅんとした朱美かわいいな。
こいつは歩が嫉妬に狂うのもわかる。
でも歩は浮気をやめないのだ。
業の深さに、賞平は自分の出る幕など
はなからなかったのではないかと思った。

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「せんせぇ。あたし、もう苦しくてだめ。」
朱美は上目遣いに賞平に甘える。
こいつ、多分自覚はないが
すげえ甘えた誘い方が上手い。絶品。
女としての色気をわざと後ろに隠しているが
それが匂いたってくる。
自覚がない分、始末に負えない悪女だ。
「歩がぁ。酷いんだもの。
あぁん。もういやぁ。」
朱美は溢れる手前の涙を瞳にたたえて
なおも上目遣い+小首を傾げる
ある意味悩殺ポーズをキメてくるのだ。
これは、だめだな。
でもこれをダイレクトに説明したところで
朱美にはわかんないだろうし
歩が浮気をやめないと
同じことの繰り返しだ。
「お前がつらいのはあいつの浮気だろ。」
「うん。」
朱美は今度は歩を思ってか目を伏せて
切なそうに頬を染める。
こりゃいかんな。うん。いかん。
「でも勉強が手につかんとばかりも
言ってられんぞ、この成績じゃあ。」
賞平は別に自分が朱美に手を出したいとか
そういう次元ではないことを
誤解されないようにこれを説明するのは
無理だと判断した。
これはいっそ歩も一緒に話をするか。
朱美のこのひどい成績の元凶は
あいつなんだから。
賞平がすっかり頭を抱えていると
ミーティング室の扉ががたがた音を
立て始めた。声がする。
「坂元先生。そこに朱美いんだろう?」
うわあ、早い!これは聞きしに勝る
嫉妬深さである。
「歩か。お前にも関係する話だ。入れ。」
制止すればさらにややこしくなると思い
賞平は歩の入室を促した。
「え、いや、せんせぇ。だめぇ!」
また朱美が甘えた声と怯えた声半々で
拒絶する。え、なんでだよ。あいつにも
ちったあ話をしないと…
ばん!と荒々しいドアの開け方をして
歩がどかどかと入ってきた。
迷わず朱美の前にいくと仁王立ちになり
右手を挙げる。朱美は体を丸くして
必死に防御の体勢を取った。

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賞平はビックリした。
今まで気づかなかった自分に情けなくなる。
DVだ。
これは介入しないわけにはいかない。
「こらあ!朱美ぃっ!こんなおっさん
たぶらかしてやがってこの淫乱女!」
「ちょっといやだあ!やめてよう歩ぅ!」
「違うよ歩やめろって!」
歩は挙げた手を力を込めて振り下ろした。
やめろ!歩!

歩は右手を振り下ろすと同時に左手で
朱美をくるんと回しお尻を右にして抱えた。
「いたあい!いやあんやめてぇいやいやあ!」
「お仕置きだこらあ!」
歩は朱美のお尻をお仕置きとか言いながら
味わうように、わざと大きな音が出るように
大切に叩く。スパンキングだ。
朱美もハデな反応はしているが痛みの奥の
恍惚としたところに達しているのはわかった。

うわ。めんどくせえ。

本人たちその気はないんだろうが
まわりを巻き込んだプレイになってる。
だから朱美はこいつから離れられないのだ。
あ、歩は計算ずくだ。
いまチラッと俺を見て口の端を上げた。
「先生。悪かったな。騒がせて。」
二人はお互いの体を触り合いながら
うっとりとしている。
俺はすっかり嫌になって、でもはっきりと
今後の担任としての方針を述べた。
「お前らのプレイに巻き込まれるのは
ごめんだ。俺だって忙しいんだからな。
朱美の成績をもとに戻せ。これ以上
下がったら俺も実力行使すっからな!!」
大人げないがこれ以上大人を小バカに
していたらそのうちギャフンといわせてやる。
朱美はしおらしく、歩はしてやったりな顔で
帰っていった。