鶴屋開店休業回転ベッド

あたしの創作世界の基盤。だけどとてつもなくフレキシブルでヨレヨレにブレてる。キャラが勝手に動くんだ♪

俺とおまえ3

たまに
「俺はもう妻に愛されていないんじゃないか?」
とか思う。
たまにね。

そんなことを考えていると
いつもの妻の言動がフラットに見られなくなり
たまらなく寂しくなってしまう。

本当は、妻は俺に首ったけなのはわかってる。

それを素直に表現してくれないのは
昔からなんだけど、ここ近年特に酷い。
二人きりの時は、キスするのに迷う必要なんか
ないだろ?それを察して避けたり離れたり
するなよな。キスくらいもっとちゃんとしようよ。
そんなに嫌なのかよもう俺のことなんか愛して
ないんだろーウガーくそ~
ってごねると、少し濃い目のをしてくれる。
何だかんだ言って妻の頬は淡く紅潮しているし
キスし終えた後のため息だって熱い。

妻は言う。

「今さら旦那相手に真剣に恋愛してたら
疲れちゃうよ。」

疲れちゃうのか?何でだよ!

「実は。いつも我慢してる。考えないように
してやり過ごしてるんだよ。」

何を?

「例えばね。朝、亮が起きて顔を洗って
ワイシャツ着て。朝御飯食べるでしょ。」

ああ。

「その時、もしあたしが亮に抱きついて
離れなかったらどうなるよ?」


f:id:sinobusakagami:20151220001449j:plain


俺は想像してデレッと鼻の下を伸ばした。
それ、いいじゃん。
もう俺のひざに座って、頬擦りなんかして
温もりを感じあっていたらいいじゃん。

「朝飯、出ないよ。あんたに抱きついてたら
トーストだって焼けないし、珈琲だって
淹れられないし、そもそも弁当が詰められない。」

んん。

「渉や卓も起こして朝飯食わさなきゃなんないし、
合間に洗濯も回してるし、キッチンの片付けだって」

美月。いや、そこまでずっと俺にぺったり
くっついていたいのか?

f:id:sinobusakagami:20151220001543j:plain



「ブレーキ掛けんのは結構たいへん。」

おまえ。極端だな。もう少しなんとか塩梅
できんのかい。

「出来なくなるのはこわい。」

じゃあ、夜は?それこそ夜ならいくらだって
一緒にいられるんだし。邪魔するものは
なんにもないじゃない。

「だって。もうこれ以上好きになりたくない。」

f:id:sinobusakagami:20151220001604j:plain



俺は不覚にも一緒に胸の痛みを味わってしまった。
一歩間違えば日常を逸脱してしまうほど
そんなに俺を好き?ねえ。

「ずっとだよ。高校のときから。」

あー。もう。どうしてそんなに可愛いんだよ。

くそう。甘い。甘酸っぱい!

f:id:sinobusakagami:20151220001619j:plain



おばさんの鎧を被った美月の中身は
あの頃からちっとも変わらない
純粋に俺を好きでいてくれてる
かわいいオンナノコだった。


俺はだいぶ粘って、美月にその鎧を外して
もらう日をつくってもらう約束を取り付けた。

土曜の夜に。

また、鎧をつけるのは日曜の夜に。

他のときには、お前の気持ちを掻き乱したり
しないからさ。



土曜の夜。美月から俺の首にぶら下がる
ように抱きついて、キスをねだる。

f:id:sinobusakagami:20151220001644j:plain



「亮が悪いんだからね。」

俺は不敵な笑み(の、つもり)を浮かべて
美月を布団に押し倒した。