鶴屋開店休業回転ベッド

あたしの創作世界の基盤。だけどとてつもなくフレキシブルでヨレヨレにブレてる。キャラが勝手に動くんだ♪

浅海と賞平3

「蒲生が訪ねてきたって?」
賞平とは本校に行かなくなって
しばらく会っていなかった。
どう伝え聞いたのかいぶかしんでいると
「美月に、聞いた。」
以心伝心のタイミングで返事が返った。
渉が話したのかな。
美月に伝わるまでは良かったが
賞平から話が回ってくるのは少し
居心地が悪かった。
「どうして?」
元旦那が訪ねてきたことを
なぜ問い質されるのか、自然と刺々しい
口調になってしまう。
「何も責めてるわけじゃないさ。
なんか美月や渉には言えないような揉め事が
起こりそうなら俺が相談にのる。」
まったく。
この人は誰に対しても兄貴で
それを自分ではまったく意識せずに
やってるところが参る。

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浅海は思う。
渉を好きでよかった。
今、もし一人で幸せから突き放されたような
寂しい身だったら賞平に惚れてると思う。
「そんなことでワザワザ電話くれたの?」
悪態をつきながらも、声が甘えてしまって
ツンとできない。情けなかった。
「そうだよ。」
兄貴は特に気分を害した様子もなく
話の続きを進めていた。
「いや、美月はそんな揉め事が起こる
気配はないって言うけど。万が一ね。」
これは義理の母も一枚噛んでいるのかも
しれないな、と浅海は思う。
でも二人とも隠し事とかの出来ない人種なんだ。
雅也も彼女が出来たと
満足そうな顔はしていたけれど。
先にこんなに幸せになってしまった自分は
胸の奥にチクリと痛む棘がある。
でも雅也は揉め事を起こすようなヤツじゃない。
「大丈夫よ。断言できるわ。」
「そうか。なら、よかったよ。」
賞平は安心したのか、言うことだけ言う形で
電話を切った。
分かりやすいひと。


安定期に入って、また夜の営みが頻繁になる。
大きくなり始めたお腹が邪魔になるが
横になって、渉が後ろから首筋を甘噛みすると
自分にもすぐにスイッチが入る。
「渉ぅん。」
「浅海。だめ?」
この甘えた声がたまらない。
あなたが一番よ。
渉の肉棒は金属と思えるほどに
硬くなっている。
「ゆっくり、きて。」
渉も心得ていて、あまり深くは入ってこない。
一層豊かになった浅海の乳房をやさしく
揉みしだいて敏感な先端部を柔らかくしゃぶる。
「あ、あん。」
「ごめん。とまんねえ。」
渉の激しい動きに、浅海も段々と
我を失っていく。




「お前は渉の何処に惚れたんだ?」
浅海が本校に赴任の打ち合わせをしに来た日。
校長室を出たところで賞平と行き合った。
送ってやろうかと声をかけられて
甘えることにしたが
車に乗り込んで開口一番こう来たのだった。

「美月先生もお義父さんも分からなそうに
してたけど、みんなどうして分からないのかしら」
浅海は本当に笑ってしまう。
あんな男臭くて女の恋心を本能から鷲掴みに
するあいつの匂いが全く分からないのね。
「女って惚れた理由をきちんというやつと
いわないやつといるよな。」
「あ、あたし、雅也とは身体だなあ。
セックスで満足させてくれる気がした。」
「身体かよ!」
「でも、体からあいつの男っ振りに惚れた
っていうのもあるけどね。体だけじゃないの
あの男はね。」

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賞平は若い頃、体だけの関係ばかりで
惚れた女にはからきしだったのを思い出す。
蒲生は学校でもセックスばかりしていて
その時その時の学年主任にまで顔を覚えられる
くらいにどやしつけられていた。
だが、寝る女は浅海ひとりだった。
「渉はね。体だけでもいいから触れて欲しい
って思わせる。振り向かせたいって思わせる。」
賞平は渉を教えていた高校生当時のことを
思い浮かべてみる。
そういや、毎年渉には回りに色気づいた女子が
何人かうろうろしていた。

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目立った行動を起こさなかったのは
一緒に美瑛がいたからだ。
あいつに喧嘩を売れるほどの女子は
なかなかいない。
「でも男性が彼の魅力に気づかないのは
分かるわ。同性からしたらたんなるいいやつ
だものね?」
「いや、あいつは俺には割と敵意を持ってたよ?」
賞平は首を横にゆっくり振りながら苦笑い。
「やだ。渉ったら賞平くんにもヤキモチ
妬いてたの?んもう。」
「ヤキモチ?」
「正直、賞平くんと美月先生ってどこまで
いってるの?キスくらいはしてるんでしょ?」
賞平は別にやましいことはひとつもないのに
真っ赤になってしまう自分が情けなかった。
浅海は声をたてて笑った。
「本当にだいじなのね。なんなのかしら
この感じ。前世では絶対夫婦だったわよ。」
賞平はなんだか胸の奥があったかくなる。
そのわりに美月の手足をタオルで縛って
犯したい衝動だってずっと変わらず持ち続けて
いるのは我ながらおかしなものだと思う。
「可愛いなあ、賞平くんは。」
「ばか!」

「じゃあ、賞平くんは美月先生のどこに
惚れちゃってるの?奥さんのことは?」
浅海が矢継ぎ早に質問を返すと
賞平は複雑な顔で笑った。
「美月には、S。美雪には、M。」
「なんの記号論?」
「美月のことはいつでも犯したいと思う。」
「ん。正直ね。」
「自由を奪って側に置きたい」
「ふぅん。」
「女房の方は、違うんだ。同じ犯すにしても
俺はあいつに半ば誘導されていく。
で、しまいには抱き締められて
『いけないひと。』とか言われて赦される。」
浅海は何だか、濡れてしまう。
赦す快楽が、とろりと溢れ出す。
自分の体で暴れる男を包むしあわせ。
熱くなった。
「奥さまにはお会いしてみたいわ。」
「お前とは会わせたくねえな。」
「なんでよ。」
「いらんこと吹き込まれそうだからさ。」


浅海は誘う。
「渉ぅ?」
くちびるを渉に向けて、声に出さずにねだる。
抱いて。
「浅海!」

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渉は速攻で浅海の望み通りのものをくれた。
オンナに生まれてよかった。
同時に渉がオトコに生まれてくれたことに
感謝した浅海だった。