鶴屋開店休業回転ベッド

あたしの創作世界の基盤。だけどとてつもなくフレキシブルでヨレヨレにブレてる。キャラが勝手に動くんだ♪

入籍

「わあ。久し振り!こんなんだったわねぇ。」
「浅海ー。」
市役所で婚姻届をもらってきた渉と浅海。
浅海は二回目なので懐かしいらしい。
保証人の欄には渉の両親、亮と美月の署名を
お願いするつもりだ。
「なんか。待って。手が震える。」
渉は無駄に緊張してペン先が小刻みに踊る。
浅海はそっと渉の手を取った。
「しっかりして。パパ。」
「浅海ー!」
浅海は純粋に励ましたつもりだったのだが
渉はもっと緊張してしまって
とうとうペンを放り出した。
「先に書いてて。ママ。」


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紙切れ一枚とは言え
この紙切れ一枚の威力を思うと手が震えた渉。
普通の表情でサインをした浅海。
この用紙のもうひとバージョンにも一通り
サインをしている浅海は流石に慣れたものだった。
正直二人とも結婚した実感はわいていない。
浅海はこれから四肢の浮腫みが気になり
結婚指輪を見送ろうかとまで言い出した。
「それはだめだよ」
渉はバイト代を貯めて指輪だけでも
自分の金でプレゼントしたかったのだ。
「少しでもキツいと思ったら外せばいい」
渉は有無を言わせず浅海の顎を押さえてキスした。
浅海のぷっくりとした甘い唇を味わう渉。
音になるかならないかの微かな声で囁いた。
「浅海。愛してる。俺、嬉しいよ。
もう、ずっと俺のものだぜ。おまえは。」
喉が詰まるほどに気持ちがこみ上げる。
「あたしね。初めて渉と二人きりで話を
した時、こう、ここらへんがきゅっとした。」
浅海はお腹の膨らみの、おへそのだいぶ下を
手で触れて見せる。
「子宮よ。今は中で赤ちゃんが育っているから
ここまであるけど、本来は鶏の卵位の大きさ。」
浅海はうっとりとして渉を見上げる。
「あなたにまっすぐ睨み付けられて。
あたし、うずいたのよ。中学2年の
男の子の眼に、痛くて、濡れたわ。」
渉は分からなそうに、それでも愛しそうに
浅海を抱いている。
「その時からずっと。めちゃくちゃに
されたかったの。そんな気持ちにずっと
抗って、見ない振りして、蓋してきたわ。」
浅海は少年のあどけなさの残る
荒削りな男が成長していくのをずっと見ながら
すべてを包む想いで必死に誤魔化した。
よく7年も誤魔化し通したものだ。


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「旦那が嫌いになったんじゃなくて。
渉を好きになった。体の自由が効かない位。
あたしは旦那に組み敷かれながら
渉とのセックスをなぞらえて濡れた。
酷い女だわ。
あいつとの赤ちゃんが出来なかったのは
多分神様が止めて下さってたから。」
渉はやさしく触れて
ゆっくりと入り込んで
浅く、それでも花びらを味わうように
蜜を掻き出して貪るように大切に動いた。







俺は美瑛を裏切った。

渉はこの罪を忘れちゃいけないと思っている。
浅海も同じように、渉を想う罪を犯して
それを罪として抱えているのを知った。
同じものを抱えて、それから目を背けない。
渉にはそれが、嬉しかったのだ。

「浅海。大好き。」

渉はやさしく、赤ちゃんをかわいがるように
浅海のお腹の膨らみを撫でる。

「あん。嬉しい。」

浅海は自分のお腹に置かれた渉の手に
満足げに感じている。