鶴屋開店休業回転ベッド

あたしの創作世界の基盤。だけどとてつもなくフレキシブルでヨレヨレにブレてる。キャラが勝手に動くんだ♪

長内先生と努と阿部っち (美月と真利村兄弟5)

歩がニヤニヤしながら努の部屋に来て
言った。

美月先生もメスだね。
歩の言い方がねっちねちで努はそちらに
嫌悪感を覚える。

だって。今日帰りに食堂の前で会ったらさ
すっげえ短いスカート穿いてたぜ。
きっとあの足を男に可愛がらせて、
股の間からメスの匂いをプンプンさせるんだ。

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確かにいい足だったけどあんなののオマタに
むしゃぶりついちゃうやついるのかなあ。
アグレッシブだったよ。ちょっと頑張ってて
痛々しいかもな。

「あのさ。歩は何か用があるなら
早く言いなよ。」
歩は悪びれずに続ける。
だから、あんなのにご執心だからさ。
お前が。
だっておかしいじゃん。お前は純正ホモセクシャル
どMのセンシティブな少年じゃないか。
もし美月先生の大ざっばで男っぽく
みえるあたりに
惑わされてるなら
教えておく必要があるかと思ってさ。
お前が嫌いなメス犬どもと何ら
変わらないんだぜ?
俺は反対だよ。美月先生は悪気なく
平気で俺たちを裏切るはずだ。油断するな。
だって俺はお前が心配なんだからさ!
「歩?苑田さんとはどうなのさ。
上手くいってんの?」
歩の目は血走っていて、返答次第では
首筋に噛みついて
来そうな危ない顔に
なっている。
「まあ、鬼畜とはいえ、バイセクシャル
お前が女とセックスするとかしないとか、
俺には関係ないし。
確かにちょっと気味悪いとは思っちゃうけど
反対はしないよ?もちろんね。
俺は自分の主観を
強引に押し付ける気はない。」
歩はすごく悔しそうにしてムッスと黙りこむ。


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なんで?俺誰にも言ってないのに、
朱美とのことをそんなに知ってんのさ。
ズルい大人からのたれ込み?
俺を陥れようとする権力者の圧力?
「何が言いたいか良くわかんないけど。
苑田さんのことは、ここ数日間
歩を見ててわかった。
それだけだよ?お前の相手をいちいち
詮索したり自分の尺度で批判したり
するつもりはない。」
歩はぶんむくれて努に背を向けた。
いくら俺に美月先生を悪く言われたからって
大人げないんじゃないのか?
努は大人げないのは君だろうと心でそっと
突っ込むとそろそろ不毛な言い争いは
終わりにしようと思う。


美月先生が超ミニスカを穿いていただと。
狼狽えれば歩が調子に乗る。
努は歩が部屋を出ていった後
なんだか切なくなって少し泣いた。
美月先生の超ミニスカ姿は上手く
想像出来ないが
他のオンナどものように、獲物としての男が
いるのだろうか。餌にかかるオスに
食べられる振りで存分にオスを味わうの
だろうか。貪欲に、求めるのだろうか。
努は、ついに想像しきれなかった。
まだ、美月先生が超ミニスカ姿だなんて。
信じたくない。自分の脳が情報操作
するんだろうな。
その時何故かこの双子は、鷺沼美月という
26歳の女性が結婚を間近に控え、リア充
極めつつあるということを一欠片も
嗅ぎ取れなかったのだった。









「先生、来月の三日から一週間休暇を
貰うことになった。」
HRで美月はさりげなく重大発表をする。
「皆の理科の授業は代わりに美山先生と、
高校の方の坂元先生が一回
来てくれることになってるから。」
女子たちが冷やかすように囃し立てる。
「やだーあ!先生、結婚式&新婚旅行みたい!」
美月はとくに表情は変えなかったが、
それなら話は早い!と
言わんばかりににっこり笑った。
「良くわかったね。来月、休暇から戻ったら
先生の名字は鷺沼から長内に変わります。
少しずつで構わないから言い換えるように
してみてな。」


スッ転んだときの痛み。
そうだね、浮かれてた分だけ痛いかも。
努は悲しいと言うよりは、
虚無感が全身を包み込む感じで
鏡を見なくても自分の目が、いわゆる
死んだ魚の目と呼ばれる類いのものに
なっているだろうことはわかった。
でも。ショックなのは自分だけだ。
美月先生にもし告白なんぞしてみろ、
お互い死ぬほどに気を使って
今頃俺は登校拒否だった。
本当によかった。努は心から安堵した。
辛いのは俺だけだ。美月先生は、
手放しに幸せになるべきだ。
俺なんかのことで煩わせることにならなくて。
良かった。
ようやく、涙が出てきた。



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「元気ない。」
一緒に下校する阿部が、
いつも歩いている間は体に触れないのに
指先でちょこんと手を繋いできた。
「なんか、俺には出来ること、ない?」
駄目だな。心配してくれる人に
俺はたぶんすごく弱い。
美月先生にだって、きっかけはそこだった。
俺は傷ついて弱くならないように
ずっと誰も好きになれなかった。
好きになっても認めちゃ、いけなかった。
なんでかな。自分だけ認めても良かった。
自分が好きでいるまでは自由なんだから。
俺は、好きという気持ちに振り回される
だけじゃなくて、強くいられることも
あるんだって思えるようになった。
「じゃあ。キスしてよ。」