鶴屋開店休業回転ベッド

あたしの創作世界の基盤。だけどとてつもなくフレキシブルでヨレヨレにブレてる。キャラが勝手に動くんだ♪

懐くとかわいくなってきます 2

藪にらみ。
阿部の目付きが激しくなってきた。

阿部と二人でいても、努は俺を見ると
こっちに可愛い笑顔をおくり、無理のない
距離なら俺のところにきて撫で撫でを要求。
ふた撫ですると満足して阿部のところに戻る。
その時の阿部の目がね。
怖いなんていうのは馬鹿馬鹿しい。
こうなると努をかわいいと思う自分の気持ち
自体がやましいもののように思えてしまう。
今度は俺があいつの首筋にお返しのキスを。
どんな反応をするのか。
いやいや、俺は努を一生徒としか見てない。
それを阿部が「俺のかわいい努に手を出すな」
的なビームを出してくるからこっちだって
分かんなくなってくるんじゃねえか。
いや、分かんなくなっちゃいねえよ。

美月はけらけらと笑いながら
「賞平くんと佑樹が二人っきりになった
ところが見ものだよね!案外佑樹の方から
タイマン張りに行くかもよ!あはははは!」
何が楽しいんだか理解に苦しむが、美月に
楽しんでもらっているなら良しとする。
こいつが手放しに笑ってるうちは大丈夫だ。


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そんな会話をして2~3日したある日。
放課後にミーティング室にいたところを
不意打ちの訪問を受けた。
「努、来てますか?」
阿部は多少目を泳がせつつ、本当に努を
探しに来たきっかけと装う。
俺と二人で話があるのはわかるから。
へんな小芝居打たなくていいからね。
予想以上に早いお越しではあったが。

「なんか、すみませんでした。」
え?奴さんいきなり謝罪?しかも何の謝罪か
今一つ絞りきれない!
「何の話だ?なんか謝るようなこと
やったのか?」
「俺、ちょっと。知ってますよね?
俺と努のこと。」
「美月からは一通り。」
「美月先生は女の人だから別に心配じゃ
ないんだけど、坂元先生は、男の人だから。」
もうわかってるのに、わりと丁寧に遠回りする
阿部にちょっと笑ってしまう。生真面目な奴だ。
「なにが可笑しいんですか。」
「いや、すまん。確かに俺も努に懐かれて
いい気になってたよ。お前からの視線が
日に日に険しくなってったのもわかったよ。
申し訳ないかなって思い始めたとこだよ。」
俺は正直に努のかわいいこと、ヤキモチを妬く
阿部の過剰反応も否定しないよう気をつけた。
「誓って言うけどさ。俺は男をどうこう
しようとかいうの、ないから。」
阿部の顔は程よく愛想笑いをしているが
目が笑ってない。
「じゃあ、どうしたらお前の気持ちは
治まるんだ?」
今思えば随分と放り投げた言い方だ。
こんなの正解なんかありえない。
「俺が悪いんです。努、かわいいから
普通の男の人でもその気になっちゃうんじゃ
ないかとかへんな心配してヤキモチ妬くから
別に現時点で何がどうなった訳じゃないのに
ていうか、なってないですよね!」
わりと拗れてるのか?

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「はーい。そこまで。」
いつの間にか戸口に美月と努がいる。
「佑樹も甘える人を別につくったらいいん
だよ。努が賞平くんに甘えてるときは
佑樹はあたしに甘えたらいいんじゃん?」
これは誰の頭にもなかったので
俺も、努も、勿論阿部もフリーズした。
そんな固まった男どもの間を縫って
美月は阿部を顔ごと母乳に抱き締めた。
「あ、佑樹をダッコすんの初めてだね。」
阿部はハッと我に帰る感じでジタバタと
手足を動かし始める。
「や、やめてください!」
「自分でもどうにもならない気持ちは
誰かに甘えて溶かしちゃうってのもあり。」
阿部は美月の胸から顔を上げる。
「美月先生。じゃ、今だけ。」
胸に収まるのは恥ずかしかったらしく
椅子から立ち上がって、普通の位置取りで
美月に抱きついた。
後ろではやはり気に入らないのか
努が美月を阿部とサンドイッチにするように
背中から抱きついていく。
俺はまた踊らされるだけ踊らされ
慌て損じゃねえかよとむくれていると
美月が俺に手招きする。
俺は遠慮なく美月の左から三人を抱き締めた。

あの日を境に努が俺に甘えてくる回数は
だいぶん減った。
背中におぶさるように懐いてくれるのは
月に一~二回になった。
相変わらず可愛いが、今までと違うのは
すぐにあとから阿部が取り戻しにくるように
なったことだ。
「つとむは可愛いんだからそんなにサービス
したらダメ!」
「佑樹。」
なんかこのヤキモチのオープンさ加減
昔からずっと身近に体感していたなあ。
亮だ!あいつのヤキモチにそっくり(笑)
二人案外幸せそうにしていて
俺に対する阿部の態度もきつくなくなった。



「美月はさ、阿部のこともオッパイ責めに
して事を丸く収めたよね?」
「まあね。」
「仕上げに俺のこともオッパイ責めにして。」
俺はさりげなく眼鏡を外してアピールした。
「んもう。あいつらのことでは苦労かけた
もんね。わかったよ。ダッコしてあげる。
目つぶって待ってて。」
晒で押さえてあるとはいえ、阿部も抱かれた時
随分と慌てていた。抱かれ心地はいいはずだ。
俺は素直に目を閉じた。
しばらく待つと美月の手が頭を撫でてくれた。
気持ちいい。
おいで、賞平くん。
言われるままに俺は美月に抱きついた。
ぽよん。
ん?
弾力はかなりいい感じだが
よく知る女の乳房とは違う!ちがーうっ!
目を開けると俺の前には中年肥りの森田先生が
ニコニコしながら立っていた。

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「美月。」
森田先生と長内先生は息が止まりそうな位に
爆笑していて、俺の問いかけには一向に
反応を返してはくれなかった。