鶴屋開店休業回転ベッド

あたしの創作世界の基盤。だけどとてつもなくフレキシブルでヨレヨレにブレてる。キャラが勝手に動くんだ♪

父として

「え?!17歳も年上だって?」
忍は思わず声を荒らげた。
美瑛にも新しい彼氏が出来て
家でもニコニコしていることが多くなった。
渉とつき合っていた頃より随分と顕著に
明るく笑うのだが、忍は今までに見たこともない
娘の表情に、逆に何が起こっているのか
不安になってしまう始末だった。
「パバはどんな彼を連れてきても
気に入らないんじゃない?渉は美月ちゃんの
息子だったから表立っては言わなかったけど
良い顔もしてなかったじゃない。」
何だろう。娘の口数が明らかに増えた。
今までは何か言う前に自信なさげにモジモジ
していたが、最近はキッパリと言いきる。
上目遣いであまり目線が合わないように
話をする娘だったのだが
真っ直ぐに正面から自分と目を合わせる。
なんだ!この変わりようは。
美瑛にはもう少し堂々と人前でモノの言える
娘になってもらいたいと、常日頃考えていた。
考えていたんだけどどうしてこんなに急に
なったんだろうね、俺びっくりしちゃったよ
最近の変化と言ったら違う男とつき合い始めた
ってことくらいしか思いあたんねえもん。

そいつ、大丈夫なのか?!
変なやつじゃねえだろうな?!
気になるよそりゃ!
でもパパは誰彼構わず喧嘩売ろうとは思って
ないんだからな。わかるか?美瑛。

「わかんないわよ。」

口うるさい父親だといわんばかりの
表情を作り、横目で俺を見る美瑛。
そもそも、お前が17も上の男と知り合う
シチュエーションが思い付かんよ!
大学の助教くらいしかいないだろ?!
それかバイト先の店長くらいだ!

「雅也さんは、あたしがナンパ野郎に
ちょっかい出されてるところを
助けてくれたのよ!通りすがりの普通の人。」

そんな街中でちょっとした親切を受けるたびに
親密な中になってたらお前、きりがないだろ!

「パパなんかママにカツ上げされたのが
出会いの癖に!カッコ悪ぅい。」

俺はソファに座って少しセクシーに足を組み
こっちをみて投げキッスをする妻をみた。

「瑛子だな。余計なことを。」

「あん。強い男は余裕があるものだって
美瑛に教えて上げただけだよぅ。」

この母娘は性格は違うが、舌足らずな
喋り口はそっくりである。
もう妻に至っては唇の動きを見ているだけで
犯したくなってしまう。




美瑛はすでに小学生のころから
セクシーの片鱗を纏い
それを余すことなく渉に注いでいた。
俺にはどうも美瑛の一方通行のような気がして
仕方がなかったのだが、かといってあの美瑛の
瑞々しく甘い色気に抗いきれるはずもないと
思い、半ば諦めていた。
今になって。渉が美瑛を裏切りいともあっさり
別れてしまうとは。

美瑛には渉のときのように
押しの一手で落とすのではなく
多少の駆け引きをもってしてでも
男から熱く追いかけられるくらいの
関係に持っていってもらいたい。
俺があの頃、瑛子が好きで好きで
あいつのためなら何でもする!くらいの
勢いで追いかけてたみたいに。

「女は、男に想われて護られるのが
一生のしあわせなのよ。美瑛?」

さすが俺の妻。わかっている。

「大丈夫よ。ママ。雅也さんはそういう人。」

お。美瑛も満足げにしてるじゃないか。
だが17も歳上というイレギュラー物件なのを
忘れてはならない。
とんでもない事故物件だったら
どうするつもりなんだよお前!!

「バツイチ」

「月の半分は出張で家を空けてる」

却下!
十分な事故物件じゃん。

「でも前の奥さまとの間に子どもはいないわ」

何を嬉しそうに語るかこのバカ娘はっ!
もしかして子種がないのかもしれんだろ!






あら?







うちの最強ツートップの母娘が
そろって黙りこんでしまった。

えー。

もしかして俺、地雷踏んだ?


「ひどいこというのね、パパって。
父親とか言う以前に人間としてどうかと思う。」

うわー!娘からこんな切り口で冷静に
攻められると思考停止するな!

「忍?謝って。」

妻はこんな俺の様子に苦笑したいのを
こらえてくれているのだが
この情況助けてくれないのは
ケチ臭いなと思うよ?

「軽はずみなことを言ってすまない。」







で。
なんで美瑛の彼氏の話をこんな
延々としているのだったっけ?


そうだ、美瑛がその彼氏とのことで
話があるといったのだ。

話?








「一緒に暮らしたいの。」








ダメに決まってんだろう!!