鶴屋開店休業回転ベッド

あたしの創作世界の基盤。だけどとてつもなくフレキシブルでヨレヨレにブレてる。キャラが勝手に動くんだ♪

たまに見る夢

たまに見る夢は。恥ずかしい。























いつもあの人をつかまえて
肩から押し倒す。
俺は、この体勢でいろんな女の表情を
見てきたのだ。
あの人の瞳は決まって
俺のことを真っ直ぐにみつめてくる。
俺はなんとか誤魔化したくて
なんとか感じさせて女にしたくて
あの人の首筋にキスをする。
なのに俺の唇は
その膚には触れることは叶わない。
あの人は言う。
「くすぐったい」
「あったかいよ」

俺はいつもあの人を上から組み敷いて
動けなくして、吸い尽くそうとしている。
濡れさせて自分が何者だったかも
わからなくしてやりたいのに。
それがいつだって叶わない。敵わない。

美月。
夢の中の俺は彼女より強く
彼女を守りたい、自分のものにしたい、
征服したいという気持ちにも似ている。
体を、犯せばそれは叶うのか。
彼女には敵わない。絶対に。

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俺があの人を押し倒したあと。
決まってあの人は嬉しそうに笑って
俺を抱きしめる。
歩。大好きだよ。
お前がとびきりのいい男になるのを
あたしは遠くから見てる。
不安になったら
いつだってこうしてやるよ。
そしてお前はまたひとつ
やさしくなる。
あったかくなる。
たとえ表面は冷たくても。
奥があったかいの。
あたしにはわかるよ。

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自分が何をしても
絶対に愛してくれる
すべてを受け入れてくれる
全部を肯定してくれる。
そんな存在はない。
欲しがるならそれは
エゴイストのとんでもない
勘違いだとも思う。

俺は夢から覚めるといつも自己嫌悪に
苛まれてしまう。




理科準備室に行くと
美月先生と会える。
担任の坂元先生に用があるときは
正当な言い訳があるから
堂々と美月先生と会える。
それ以外はダメだ。
努はゴロゴロと喉をならす猫のように
彼女に会いに行く。
俺には出来ない。
「お、歩久しぶりじゃん!」
ぱあっと明るく笑う美月先生。
眩しすぎて照れ臭くて見られない。
こんなに愛されたい自分が
あんまりにも恥ずかしくて
迂闊にも顔を真っ赤にしてしまった。
美月先生は相変わらず笑っている。








「あいつに一度でも甘やかしてもらった
やつは、忘れられなくなるんだよ。
魔性の女だな。歩、かなりやられてるだろ。」
ある日、日誌を届けに職員室にいくと
坂元先生が俺をつかまえて言った。
「なんの話ですか?馬鹿馬鹿しい。」
過剰に反応しすぎた。
「磁場が狂う。あいつを何者だと思えば
いいのか。いっそ抱いて女にしちまえば
楽チンなのかもしれんがね。」
「坂元先生、美月先生に惚れてんすか。」
坂元先生はにやっと笑うと一瞬すげえ悪い
顔になった。

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俺は理科準備室に向かった。
「お、歩。賞平くんなら職員室だよ。」
俺は素直に、自分の気持ちに従うように
あの人に抱きついた。
いつもは避けられるのに、美月先生は
俺を抱きしめて頭を撫でてくれる。
嬉しい。どうしてこんなに嬉しいのか
わかんないくらいに。
俺が何をしても何者になっても
愛してて。こうしてあっためて。
「美月。大好きだよ。」
「あはは、言われなくたってわかってる。
あたしだって歩が大好きだよ。」
時間にして五分足らずだったけど。
本当にあの人の体はあったかかった。

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