また今年も君とともに
俺たちは新年の挨拶を済ませて
努の部屋にいた。
努のご両親のお店でカウントダウンパーティー
たのしくどんちゃん騒ぎをしたあと
家に帰ってきたのだ。
「年越しくらい、親父さんとのんびり
していてよかったのに。」
努はもう連れ合いのいなくなって長い
うちの親父のことをいつも気にかけてくれる。
「大掃除手伝ってくれたじゃない。それだけで
親父は満足しているよ。」
もういくらなんでも、親父も気づいてる。
俺が努を愛していること。
これから一生を添い遂げること。
親不孝だろうか。
俺はそうは思わない。
努は俺の家族を
俺は努の家族を
誰より大事に思っている。
それは普通の男女の夫婦と変わらない。
「ねえ。努?」
やっと静けさを取り戻した
二人きりの空間で、俺は努を味わう。
愛しい。お互いに同じように年を重ねて
いくはずの同い年の俺たちなのに
なぜか、努はいつまでも滑らかで弾む体を
相変わらず俺に抱かせてくれる。
「なに?どうしたの?」
快感の余韻も褪めない折り重なったシーツの
波間から、努は俺に応える。
「俺はいつもお前に甘えてばかりだな」
正直、俺は自分が何のつもりでこんなことを
口にしたのか良くはわからない。
「そんなことないよ。俺の方こそ。」
努は俺にウインクを投げる。
たまにこんなお茶目なことを違和感なく
やってのける。俺はあらためてやられる。
「お前は俺が持っていないものを持ってる。」
努は首を傾げた。
「なんだろう?」
「魔性。」
「なあに、それは。」
「俺はお前の魔性に支配されてる。うふふ。」
ベッドの上でお互い一糸纏わぬ姿での会話だ。
こんなものだよね。
「愛してるよ。努。」
「今年もよろしく。」
「安心して。満足させてやるよ。
降参するくらいに、してあげるから。」
「んもう。それだけじゃないよ。」
俺たちは何だかんだ言いながら
年を越してから何回目かのセックスに
とりかかった。
除夜の鐘なんかよりよほどたくさん
努のよがり声…通称エンジェルボイスを
鳴らしながら俺たちは煩悩の海に溺れた。