スウィート※R18
「だめ。」
こんなにだめが色っぽく
だめがだめじゃないオンナがいるものか。
雅也はデートの度に思う。
「いやぁ。」
以下同文。
赤信号を待つ間、助手席に座る美瑛の太ももに
手のひらを置く。
特別動かなくても、彼女は自分の肌のぬくもり、
感触にどんどん高まってくれる。
これはそろそろご期待に応えようと
雅也が太ももの内側へと指を這わす。
「だめよう。」
「なんで?」
「あん。感じちゃうの。濡れちゃう。」
「触れてるだけじゃねえか。」
「いや。いやあん。」
雅也がショーツの隙間から指を差し込もうと
すると拒むように、美瑛のむっちりと
湿った土手と太ももに挟まれた。
「もう、雅也さあん!信号青よ!」
雅也は渋々手を離して運転に集中した。
「少し砂がついちゃったわ。」
浜辺を散歩していて、貝殻を拾ったりしていた
だけなのだが、美瑛のバッグやスカートには
湿った砂が所々についてしまっていた。
ドライブは二人きりの狭い空間が嬉しい。
雅也は夏になるのが待ち遠しくなる。
夜の海辺で、潮騒に包まれながら。
セックスしたい。あ、勃ってきちまった。
「くそう。お前のせいだぞ。なんとかしろ。」
雅也は股間を指差してみせる。
「んもう!何を想像したのよぅ!私知らないわ」
雅也は急に進路を変えて
ショッピングセンターに車を入れた。
郊外型の広い駐車場。
ガラ空きの出入口から遠い一角に車を停める。
そそくさとチャックをさげた。
「くわえろよ。」
美瑛は一瞬反抗的な鋭い目線を雅也に向けたが
それもたまらなく綺麗で色っぽかった。
「くわえろ。」
雅也がゆっくりと命令すると、美瑛の表情が
とろけ始めた。
「あん。雅也さんの意地悪。」
「愛してるよ。美瑛。」
「あんっ!雅也さんのおちんちん
太くて長くて、苦しいよぅ。」
情けないことにこんな言葉と決して上手いとは
言えない舌使いでどくんどくんと絶頂に
達してしまった。
美瑛は必死でびくびく動く雅也をくわえながら
吹き出す精液を飲み込んだ。
「んふ、んふぅ、んふうん。」
雅也が絶頂に達したことに本能から快感を
覚えたのだろう。美瑛は鼻からよがり声を
微かに漏らす。
「美瑛。ありがと。最高だ。」
名残惜しそうに自分の亀頭を唇からぷるんと
吐き出した美瑛を抱き起こすようにして
キスをする。
自分の精液にまみれた口腔内は少し複雑だが
彼女の唇や舌はとろけそうに甘い。
「くそう。まだ明るいけど、行くか。」
ラブホテルのベッドの上で
ふたりとも胸の奥の不安の芽を自覚する。
あんまりにも、キモチイイ。
セックスに溺れるのは、度を越えなければ
全く悪いことではないように思う。
だが、もう、我慢出来なくなりそうなのだ。
ふたりの体の相性は良すぎるほどだった。
気がおかしくなりそうなほどに感じる。
雅也も美瑛も、お互いが二人目の相手だが
以前のパートナーとは体験できなかった域に
達しているのは明らかなことだった。
だが、二人が不安に思うことは必ずしも
一致したことではなかった。
雅也は仕事の合間にも美瑛のもとに飛んでいき
分刻みのスケジュールでも彼女を抱かなくては
いられなくなるかもしれないという
現実的な悩みだった。
一方、美瑛は体の結び付きばかりが先行して
心を愛してもらえているのか、自分も彼を
体抜きでも愛していると言い切れるのか
そこがどうにも不安になったのだ。
雅也は美瑛のMの部分が堪らなかった。
つい、いじめたくなる。
美瑛は、雅也に恥ずかしいことを言われるのが
好きだった。渉はしてくれなかったことだ。
彼の強引で、ぶっきらぼうで、荒っぽくて
でもやさしいところが好きなのだ。
痛いくらいに振り回されて
あったかく抱きしめられる。
いやいやといいながら
いやじゃないことがちゃんと伝わってる。
離れたくない。
キモチとカラダがこんなに感じるひと。
でも不安になる。
キモチの快感は、もしかすると
プレイの延長で自分の錯覚なのかもしれない。
雅也は、不思議なほどに
すんなりと美瑛に惚れていた。
そりゃ抱いているとき、言うことをきかそうと
しているときに囁く愛の言葉は薄っぺらい。
承知の上だ。
まだお互いが服を着ているとき。
普通に話をしているとき。
自分に笑いかける美瑛に何だか胸が掴まれる。
自分を見つめる瞳の色が愛らしくて
嬉しくなり口元が緩んでしまう。
これは、美瑛にイマイチ伝わっていないのかも
しれなかったのだが。
疲れが溜まっていたのか
雅也はセックスが終わると口数が減った。
美瑛は機嫌が悪いのかと不安になり
雅也に擦り寄った。
「どうしたの?雅也さん。」
たまらず甘えた声で話しかけると
返事はすでにイビキだった。
美瑛はそのまま雅也の隣に潜り込んだ。
眠った顔をゆっくり眺めるのは初めてだ。
渉の寝顔は見たことがなかった。
あいつはあたしと一緒にいるとき
そこまで心を許してなかったの。
今ならわかる。
もっと甘えて欲しかった。
もっと甘えたかった。
ああ。もうそんなこと思っても仕方ないのに。
イビキをかいて幸せそうに眠る雅也に目を戻す。
「かわいい。」
17も年上のひとなのに。
かわいい。
「美瑛。」
寝ていると思っていた雅也が自分の名を
はっきりと呼んだので
美瑛は慌てて口を押さえた。
かわいいなんて言ったら叱られるかしら。
「美瑛。愛してるよ。離したくない!」
「ま、雅也さん。」
「んが。」
雅也は、まだ眠っていたのだ。
「ずご、 っ。」
「い、今、ちょっと呼吸止まってなかったっ?!」
美瑛は目を剥いて雅也の呼吸を観察した。
口元に手を当てて呼気を確認した。
10分以上そうしていた。
どうやら呼吸は正常だったようだ。
無邪気な表情で眠る雅也に
触れるだけのキスをした。